●和田:情報効率的な動的交通制御メカニズムの設計:ネットワーク通行権取引制度とそのインプリメンテーション
■発表の流れ 1.交通の世界的状況 2.従来の渋滞の制御の考え方 3.通行権取引の話 4. サプライマネジメント 5. どのような市場をつくると実現できるか ■概要 都市化の進展と車の保有台数の°増加、車の台数は10億台もある。しかし、20年間で2倍になると予想されている。一方、日本では少子高齢化により、渋滞のような問題は解消されるのではないかという考えもある。それに対して考える車、次世代モビリティをつくる試みがなされてきた。渋滞は需要の集中によって引き起こされるので、それだけでは対応することができるかはわからない。 羽藤:渋滞に興味があるのか。疎なところを束ねてマーケットにすることができると思うが、両方の問題にコーディネートで応えることが重要。 ■従来のTDM手法 ・混雑料金制度-限界費用に基づく料金を課金する。分権的には最適な交通状態を達成可能。交通管理事業が利用者の状況を正確に把握しなければいけないが、それは困難である。また時間軸を考慮しない静的な話に限り、時間的な需要の集中に対応できない。動的な課金が必要。 ・ナンバープレート規制-道路の優先的な規制。道路の容量が分かっていれば、需要が分からなくても制御可能。課題となるのは素朴な割り当て方法。ローテーション、早い者勝ちなど。利用者の自由な選択を邪魔している。 羽藤:容量に不確実性を持って与えるというのがあればそれは取り扱うことができると思う。 →容量に対してバッファを持たしておけばいい。 そこででてくるのがICTを活用したTDM手法が通行権取引制度である。特定のボトルネックを特定の時間帯に通行できる権利。通行権取引市場をつくることで実現できる。これにより、す量規制の問題も解消できる。特性としては渋滞を解消できること、詳細な利用者情報は不必要であること、効率的な配分を達成できること、Self financing原理が成立することパレート改善も可能であることなどである。 ■課題 インプリメントする方法論は与えられていない。均衡状態にどう到達するか、市場のメカニズムなどが不明瞭 均衡状態への到達過程→進化ゲーム・学習ゲームに基づく 通行権取引市場の取引ルール→VCGメカニズムに基づく市場設計 ■博士論文第3章の話 通行権取引制度に基づく信号制御方策 ・通行権価格情報だけで、運用可能な自立分散的な信号制御方策を提案する Part1 シグナルセッティング(青時間比率)と交通流を同時最適化する Part2 通行権取引、信号制御が均衡状態で達成できることを示す。 ここでは準動的交通量配分を考える。 羽藤:行動モデル的には準動的のほうがいいかも。ただ、交差点で積み残しがあるときはどうだろう。動的な遅れ時間を評価しなければいけない。 ・信号制御に関する制約:青現示の青時間比率保存則:青現示比率の和+ロス時間=1 ・容量制約条件(待ち行列が生じない状況を想定):リンク交通量=リンク青時間比率×飽和交通流率 ・利用者が費やす交通費用:スケジュール費用(希望到着時刻との差)+旅行費用(自由旅行時間+交差点遅れ) このとき 目的関数=スケジュール費用+交通費用 制約 容量制約、信号時間制約、リンク、フロー数制約 の問題を最適化すればよい。 この最適交通量配分パターンがTNP+信号制御で達成可能であることを示す。 Part2 道路事業者は時間帯別の発行枚数=交通容量とする。また完全競争市場であることを仮定する。道路利用者は自らの一般化交通費用を最小化するように経路を考える。このときの均衡状態とはフローがながれているリンクが最短であり、フローがないリンクは最短リンクと同じかせいぜい長い。つまり一番費用が小さいところにだけフローが発生する。 羽藤:終点到着時間選択は出発時間選択と同じか。 →希望到着時刻との比較がしやすいので使っている。 需給均衡条件が成り立つ→ある価格のときにサプライ=デマンドである。信号制御では交差点を制御するagent群として行動しているとする。制御している交差点の利潤を最大化するように信号スプリットを設定する。目的関数=permit price×Traffic capacity これの結果はKKTを用いて導出でき、結局利潤を最大化するところには青を入れるということになる。これは信号制御分野でスミスという人が提示していた概念とまったく同じになる。 ■博士論文第4章 一般ネットワークの市場設計 オークションメカニズムの設計 利用者が正直に入札することが一番利潤を大きくするというシステムでないといけない。 状況としては利用者は通行権バンドルを購入するし効用を最大化しようとする。また利用者のODは固定されいているとする。 利用者の評価額:私的情報(本人のみしかわからない) 効用=評価額-通行権取引費用→利用者全員の評価額が分かれば社会的余剰を最大化できる。しかしこの問題は組み合わせ最適化でNPハード、また個人情報は入手できない。 そこでVCGメカニズムを導入すると、利用者が正直に入札を行ったときに利潤が最大化される。問題としては道路事業者は組み合わせ最適化問題を複数回解かなくてはいけないこと、利用者が全ての経路に入札しなくてはいけないことんあどがある。解決方策として、問題を分解すること、競り上げオークションの利用を考えた。 ■今後の研究 ・利用者の戦略的行動や学習行動がメカニズムに与える影響の分析 ・渋滞が起こったときの問題を考えることや、渋滞有、無し問題の関係など ・動的交通配分問題におけるマクロ評価-NFD集計的に見たときの法則を使って集計英らの密度とフローでの容量や形状のメカニズムを解析したい ・ネットワーク上での交通流-物理需要と均衡パターン線形システム方程式、流れうるOD需要を求める問題としての定式化 柳沼:重要なことは需要情報をまったく必要としないということだと思う。私は需要をどう計測するかというのをやっていた。3章の信号制御に関してオフセット、系統制御の話でインタラクションに帰着すると思うが、それがどれくらい難しいか。 和田:オフセットを考えるのは難しい。一方で青時間の配分は分かる。 柳沼:解を所与として最適化してというサイクルについては。 和田:問題がぼこぼこで、ここが大事ですよというのを探した感じ。 柳沼:4章で、全てのバンドルについての選好を示すのが負担だと思う。また個人がオークションを行うときの成り済ましや、組織的な悪事についてはどう対処するのか。 和田:成り済まし、談合とかは個人が自分の評価額を正直いわないといけないということしか考えれていないでまだ考慮していない。多くのもの同時に達成するには何かを犠牲にしなければいけないと思うが、そのような安全性や効率性は大事にしたい。 柳沼:具体的にどのような効率性か。 柳沼:通勤するときに企業がお金を与えてというような場合、企業にとっての最適化問題は難しくなるのでは。 和田:目的が変化しないので難しくはならない。目的が変わると難しい。そのような場合談合が起こる可能性もあるが、談合分析も可能であると思う。 柳沼:首都圏鉄道混雑問題とかへの可能性はあるか。 和田:このままでは主体の目的が変わるので難しい。 柳沼:ネットワークシミレーションをやっているが、数値計算上の問題があると思うが、一番改善すべき点は何か。 和田:一番計算時間がかかるのはオークションの部分。ある価格でみんなの需要が時に、超過需要集合で価格が上がり過ぎる。組み合わせ最適化を解かなくてはいけない。 フロア:実務として聞きたい。リスクとか、事故とかあった場合使う方に与えられることはあるのか。鉄道なら料金を返すというのがある。しかし、道路は返してない。そのようなときどうするのか。また売り手の誘導ということがあるのか。例えばすいているところに優先的にいくようにするとか。 和田:不確実性、インシデントをどう考えるかということ。保険制度を組み入れて保険付き通行権と無し通行権でできるかもしれない。需要の発掘に関してはお金を払って乗ってもらう 羽藤:最低価格は伝えてあるのか。あればそれを引き下げるというのがあるかもしれない。 和田:それを設ければ維持費とかがあり、混雑分だけ、上げるとかはできるかもしれない。 井料:セカンドベストの解というのがあったので、ベースの価格があると思った。最低価格があり、使うには維持費以上かかる。使わないところは割り引かれていくというようになるのか。 和田:そのようにするのはいいことだと思う。ダッチオークションのように、どんどん割り引かれていく。 羽藤:道路を通行するのに無料であるというのは古い。維持管理費用の捻出がベースなので、ダッチと普通のオークションを同時にするといいかもしれない。 和田:通行権収入で賄えるとなっているので、一通りまず終わってはいる。 本田:そのことは何を保証しているのか。 和田:容量を増加される費用が交通量の一次関数で与えられるとき、容量と、価格を同時最適化する問題の解として成り立つ。交通量を決める問題だったが、まず容量増加のための関数を置くと収入で投資すると考えていい。 本田:捻出することを提案しなくてはいけないということ。ミクロとマクロの流れがどう効いてくるかは重要か。 和田:それが今後の課題。集団としてミクロとマクロをつなげたときは単一ボトルネックとしてしかたってない 井料:経路を決めてしまえばあとはすっきりするということか。どこかに行く時は経路は基本どうでもいいはず。 和田:確かに、ODを選好としもっているほうが現実的だと思う。経路の選好よりも。ネットワーク分析をそのままやった。 井料:経路列挙を個人がするとき、ストラテジックのはない。経路が決まっていれば、効率性は置いといて天下りだから公平性がない。 和田:ODだけのプリファレンスをとってやると枠組みがすっきりする。それと希望到着時刻を選好としてもいいかも。 羽藤:トリップの本質的にはそっちのほうがいい。 福田:経路ベースでオークションをリンクごとにとっていたが、ヨーロッパでGPSがあるので、リンクでも十分じゃないか。 和田:経路ベースはいいが、やはり中央集権的だと思う。自立分散型にするとメッセージのやりとりが小さくなる。 福田:セカンドベストへの拡張があった。普通は全てに課金できないというイメージをするが。 和田:ネットワークの中にボトルネックだけでできないか、すべてでやらなくてもいいのではないかと思っている。どこに通行権をいれればいいのかというのを知りたい。 瀬木:価格とかは day to day? 昨日は買えたのに、今日は無理だったとかなると問題だと思う。権利が一日だけでなくて、一年と一カ月みたいな枠組みがあるといい。 和田:このシステムのイメージができないとよく言われる。現実的には週単位で更新していくとかクラスを分けていくと思う。 ●本田:不確定性を有する動的支配方程式を用いた確率空間の近似解法とその応用 今日の話は地震波のような、非線形性の強くない問題を扱っている。ネットワークの組み合わせのような話とは違うが、紹介したい。 ■不確定性 PDF(確率密度関数)が既知ならリスク、未知なら不確実性という。本質的にわからないこと、例えば断層がどこからどこまで壊れるかなどはaleatoric uncertainty(偶然的不確実性)、調べればわかって定式化できるのがepistemic uncertainty(認識論的不確実性)。今回の話で扱うのはepistemic uncertaintyの方である。 ■確率空間 確率空間の話で、標本空間Ω上のσ集合体という話が出るが、要するにあり得る全てのパターンを含んでいるということ。サイコロの場合だと全ての目の場合を考えているということ 確率測度とは、要するに確率が和が1で、どの場合についても確率が与えられているということ。 ■確率の基礎 大数の法則は、確率の数が沢山あると、足し合わせれば確率分布が収束するということ。イベントや事故の分析では、発生する事象の中にそれが含まれているかどうかが大事。 中心極限定理は、確率変数が沢山あるとガウス分布になるということ。ガウス分布になるというが、実際の問題ではそこまで到達しない。ここではガウス分布が満たされたとして話をする。 ■ガウス分布 分散が一定のときエントロピーが最大になるようにした分布がガウス分布。確率モーメントはn次モーメントが定義でき、1次モーメントが平均、2次モーメントが分散となるが、ガウス分布では3次以降のモーメントが全て0になるという美しい分布である。 ■確率過程 確率変数(ガウス分布を持つ確率など)が連なったもの。面的なら分布、線的なら時系列の変化など。 確率過程でマルコフ過程があり、有限個までの時点に影響されて次がきまるということである。有限個なので確率は積分できる。 Chapman Kolmogorov方程式は、ある時点からある時点までマルコフ過程の全ての場合の確率を足すと、前後の変化する確率が求まるというだけの話。 ■ガウスな世界 ガウス分布は美しい分布を持つ。分散のばらつきがどう蓄積するか考えた人がいて、ブラウン運動の分散の蓄積の期待値は時間の微分と等しいということがある。Fokker Planck方程式、Langevin方程式 Ornstein-Uhlenbeck過程などはそういった話である。 ■Itoの確率微分方程式 偏微分して積分すると次の時間までの状態がわかるというのが基本だが、ブラウン運動だと二階微分が残ってしまうことを発見した。連立偏微分方程式なので解ける場合もあって、解ける例がBlack Scholes方程式でノーベル賞につながった。 ■周波数・振動 系自体が不確実性を持つ場合にどう解くかが問題。構造系では重要な問題で昔から行われている。非マルコフの場合だと解くことができる。 周波数領域で解くアプローチがあり、フーリエ変換で容易に解ける。 Random Vibrations, Spectral & Wavelet Analysisの表紙は、時間方向にも周波数方向にも分布しているということを示している。 ■確率的な系の振動 構造物が地盤に埋まっている問題を考えると、地盤では波は来て揺れると反射して広がっていく。きちんと解くと周波数特性をもつ問題で、時間と周波数が入り交じる問題として有名。構造物に非線形な不確実なもの(例えば断層の破壊など)が入ると難しくなる。 ■非線形挙動の評価手法 ・等価線形化手法 非線形を線形化して解くのが等価線形化手法。古典的な手法だが重文の耐震診断にも利用されている。 ・モーメントクロージャ法 1次、2次などのモーメントが時間でどう変化するかを定式化。乱流の計算などで使われる。考慮する最高次数を決めて解く。ガウス分布だと平均・分散だけを考慮すればよいので簡単。 ・応答曲面法 ある事象パターンではこう反応という点を何点か確定的に計算して、多項式で近似する方法。高度な計算も比較的簡単に組み込める。 ・摂動法 有限要素法と相性が良い。揺らぎの合成を計算する。テイラー展開でパラメータに変動を仮定すると、解も展開系で変動を持つ形になる。それぞれの項ごとに整理すると、次元ごとの漸化式を得て順番に解けていく。 ・モンテカルロ法 乱数を発生させて不確実なものをシミュレーションする。最強の方法。問題は計算が大変なことなので、どう減らすかが問題。サブセット法は確率分布のロングテール部分を重点的に計算する方法。条件付き確率の掛け算で計算。 発生確率の高いものと低いものを重み付けしてサンプリングし、全体の確率密度が1かどうかわからなくても計算できるのがMCMC法。MCMC法は広く使われ、計算を省力化できる。 ■確率スペクトル法 摂動法では漸化式が発散する可能性がある。ある範囲内で解けないか限定しようというのが確率スペクトル法の発想。ヒルベルト空間はベクトルの長さと内積が定義できれば空間になるということで、定規と分度器があれば絵が描けるということを空間的に定義したもの。 ■均質カオス 非ガウスな現象は無視できない。エルミート多項式を引数をガウス確率変数にしたものが均質カオス。任意の確率密度関数は、非ガウスな確率密度関数で表現できる。これらの複数の確率密度関数を次元として、空間として定義する。それぞれの確率変数は直交した軸になると考える。 ■多変数HC(均質カオス)空間 HC空間で定義できると、最良近似を与えられる。確率スペクトル法では均質カオスを使って、写像により支配方程式を求める。 波動場に適用して波が同伝播するかシミュレーションできる。モンテカルロ法と比較してもほぼ同じで妥当性を持つ結果が得られた。 ■今後の課題 ・リスクより本当のuncertaintyの方が重要 ・不確定性の応答による形成される収束回収集合の評価 ・決定不可能なイベントをどうカテゴライズ・集合評価をするか。 斉藤:系自体が不確実性を持つのを定式化してシミュレーションすれば解けるというが、どこまでは現実の問題で解けていて、どういう部分がシミュレーションできないというのはあるのか。 本田:aleatoric、つまり観測すれば誤差が減る状況ではかなり解けるようになっている。一方で構造物が壊れた後どうなるかなど、シミュレーションが必要となるような問題は全敗といっても良い。エージェントシミュレーションのアプローチはあるが解けているとは言い難い。 斉藤:エージェントシミュレーションではどういう問題に適用されているのか。 本田:ありとあらゆるところである。交通の渋滞や、避難シミュレーションなどがされている。 斉藤:時間発展で変化するのは、粒の場合は空間的な相関はどう考慮されているのか。 本田:粒で定義できれば、極力粒で計算している。だが、天文などでは粒の数が多すぎるような問題があるので、流体で連続体として解いたり、極展開などで解いたりしている。 斉藤:空間を次元でくくる、確率空間を限定するとはどういうことか。限定する範囲はどう決めているのか。 本田:非線形な問題でもガウス分布で仮定すれば解けてしまう。確率空間の限定は、大まかに言えば、非ガウスの非ガウス性部分を取ってガウス分布にするというようなイメージ。 斉藤:観測との組み合わせで、部分的に確定値が得られたときにそれを組み合わせて解くようなことはやられているのか。 本田:非常に多い。水文学や気象で多い。本質的でこの質問は重要。 一番初めに定式化されたのがカルマンフィルタで、観測データで修正しながらモデルを計算していく方法で、アポロ計画にも使われた。一方で、構造物のモニタリングではあまりうまくいっていない。 羽藤:構造分野ではなぜやられていないか。 本田:観測データが少ない。部分的にはしている 羽藤:計算自体の意味がないのか 本田:劣化をきちんと観測するようなモニタリングは難しい。各構造物でリアルタイムに実際にコンクリートを取ったりするのは不可能。 羽藤:それでも、全国に構造物は多いので、超長期のことを考えてできないのか 本田:そうしたことには非常に賛成する。ただ会社が違ったり、場所や条件がそれぞれが違ったりでなかなか難しい。 塚田:メンテナンスで経年的な劣化と、地震などでのパンチを食らいながらでどれくらい持つかは、個々のものはなくても大枠で欲しいと思っている。大型車が沢山通るところはボディーブローが効いているだろうし、この橋はきちんと見るようにという指針のようなことはできないのか。 本田:トラックなどの損傷と地震の損傷などはモデル化はある。ただ合わせてどうなるかは曖昧。観測値をどう信じるかも問題で、decision makingにどうつなげるかは課題となっている。精緻なものがないので、ぜひやりたい 羽藤:サンプルをとればどうにかなるのか。1ヶ所でコア抜きにいくらくらいかかるのか。 本田:それをまずやろうとしている。1回で10万円くらい。今でも多くやられている。 羽藤:だとすると、捨てられているデータをきちんと集めて分布をつくる、構造物をどうサンプリングするかという話か。 本田:真値を宣言するメカニズムを作らないとならない。 和田:今日の話は不確実な現象を記述して予測する話で、それに対して制御や設計はされているのか。そこで、ミニマックス的に想定した設計は過剰にリスクを取りすぎていたり、リスクメジャーや制御はどうなっているのか。 本田:制御は動学的な経済学的コントロールはなされている。設計は別の枠組みで静的に決まっている。最悪シナリオでないならどうすればよいかは測度で、唯一ある測度は確率。発生確率が低い高いで考えられていて、それが欠陥。精緻な理論なのでそれらしいが、河川堤防は50年、建物は5000年など、個別によくわからなくなっている。 羽藤:確率でやっているということか。 本田:そうだが、私はカテゴリーなど別のやりかたでやりたい。エンジニアの知見と危険評価が結びついていない。構造物が効くか効かないかは、ギリギリのときにどうなるかが大事で、5mの堤防なら5m近辺のときにどうパフォーマンスするかが重要。それが構造化されていないので、評価指標とすることをしたい。仮定した確率をどう捉えるかは難しいし、経験的にしか当たらない。それで構造物の設計をするとアンバランスになる。 ●兵藤:インフラと維持管理連動型ロジスティクスに向けた展望と課題 ■最近の物流の流れ ・東芝の拠点の数:集約されている.拠点の規模が大きくなる・高度化.欠点として震災などのリスクがある. ・今年度第5回の物流調査が行われた. ・冷凍食品:温度管理など高度な技術を必要とする.在庫管理が重要.ロジスティックス=在庫管理というイメージがある. ・宅急便の進歩:ヤマトの羽田クロノゲート:国内最大の路地拠点 ・ネット通販:宅配便は衰退せずむしろ需要が増えている→高度な物流拠点が必要 ・大和ハウス,三井不動産:物流会社ではないが,物流拠点を作っている. ・圏央道ができつつある.来年春には厚木IC.周辺に物流施設. ・立地選択モデル:おおよそモデルの予測通りに立地しているという結果が出ている. ・プロロジス:首都圏だけで20箇所.圏央道,湾岸地域(千葉付近←羽田と成田の中間)に分布. ■大型車の動き ・特殊車両はルートを事前に申請しなければならない.2004年からネット申請に.年間100万件の経路データが取れる.IBMが実際に道路情報と組み合わせて分析している. ・道路情報便覧データ:交差点の折進可否情報まで含んでいる.国交省の実務でも使われている.沖縄本島で実験. ・国際コンテナの流動:多くのコンテナが晴海通りを通る.ボトルネックは何か.折進不可交差点など. ・道路は重さ指定がある所もある.貨物トラックはそこを集中的に走る. ・実際の走行データ:小田原-厚木は通れないことが判明.交差点の改善で通れるのでは. ■在庫管理 ・移動時間<ストックされる時間 ・ストックの時間をどうするかが重要. ・ABC分析:回転の速いものはなるべく手前に.あまり動かないものはなるべく奥に.スペースを有効活用. ・ハリスの式などがある. ・定量発注モデル:需要が上がって,在庫が減る.在庫が充当されるの繰り返し.発注点を決める. ・日々の需要は,発注してから届くまでの時間,移動需要等を用いて正規分布で表される.平均的な需要と安全を考慮したモデル. ・ブルウィップ効果:ビールゲーム:リテール,ホールセール,ファクトリーの3者からなる.情報が下に流れていくのに対しモノが上に流れていく.下に行くほど誤差が大きくなる. ・リテールとホールセールの2者の場合:客が来て減った場合,過去の移動平均も考慮して工場に発注する.計算すると,卸の在庫量はブルウィップ効果で発散していく.シミュレーションしてみると過去5日の移動平均で発散する.過去10日間のデータでは発散しなかった. ・情報共有型にすることで在庫の発散を抑えることができる. ■キャノンに対するヒアリング ・プリンター,カメラ,その他工業製品. ・最初にやったこと:ラベルの共通化.簡単なことだが効率化に貢献. ・Justintimeを減らす:在庫チェックの期間を短くする.月単位→日単位. ・最近では,卸との情報だけでなく,小売りにまで情報を伸ばしてキャッチしている. ■物流の時間価値 ・タイやインドネシアで作った製品を運ぶのに船or飛行機?→時間価値から考える. ・貨物における時間価値は陳腐化費用:価格下落.船だと2週間かかる. ・コンピューターのメモリ:1月で半値に→飛行機を使う. ・陳腐化率が低くて価格が低いと船.逆だと飛行機. ・マグロのロジスティクス:冷凍(-60℃)にして船or飛行機で生.回答の仕方を間違えなければ味は落ちない.飛行機はコストが高い.CO2排出量も飛行機の方が多い.しかし-60℃は電気を食う. ・サバ選択モデル:ノルウェイと長崎のサバを比較.ノルウェーの方が支払意思額が高い. ■維持管理 ・「物流の管理システムの導入が維持管理の目玉になる」か? ・橋のダメージ:大型車のフロー制御がきわめて有効. ・簡単なODの例:橋の陳腐化係数と累積交通量を比較.単位期間あたりの更新費用を求めて最小化させる.・更新費用vs利用者均衡:「適切な交通量に誘導」する意義.大型車は少なく均衡配分を計算する意味は薄いので,直接制御が有効か. ・在庫管理とインフラ維持管理:似た陳腐化曲線を持つがリードタイムがないのでブルウィップも起きないし,主体も多数ない.欠品コストと発生確率の推計が難しい. 今泉:在庫管理の効率化のために拠点を集約vs震災などのリスクを考慮して拠点を分散.定量的な評価は可能か. 兵頭:効率化の事例はいっぱいある.企業のデータをもらえば可能.震災の方は進んでいないのでは.タイの洪水はまた集中して建てられている.リスクの方の定量化はなされていない. 今泉:分散拠点の立地拠点の根拠は. 兵藤:東西に一つずつなど大雑把なもの程度. 今泉:グループ効果で情報を共有した場合,逆にストックの減りを加速させることもあるのでは. 塚田:客の需要を優先なので,情報共有でストックの減りが早まることはない.在庫の安全率を見直すという話. 今泉:大型車のルートを誘導するとあるが,道路事業者はドライバーと管理者の入れ子構造を考えながら意地管理を行っているのか. 塚田:あまり考えていない.経路選択に関してはユーザー側に.特車についてはチェックが甘いので,チェックをきちんとする. 今泉:事業者側とドライバー,どちらにとっても最適な状態があるのでは. 塚田:圏央道はwin-winの関係を築きつつある. 羽藤:最適解は違う気がする.事業者はトラックが増えた方がいいが,国が補償するということも考えると別の考え方もあるのでは.劣化や維持コストも含めて考えているかというとそうは思えない. 兵藤:あまり考えられていない. 塚田:圏央道の淵にロジセンターがたくさんあるというのは計画されていた.阪高や首都高は圧倒的に橋梁が多い.圏央道は少ないので圏央道に流すとリスク的には小さい.京阪神はミッシングリンクが多すぎる. 塚田:生産拠点がアジアに移ると物流に影響は? 兵藤:荷物が軽くなっている. 瀬木:過積載のトラックを締め出す方法はないか.ほんの少しの過積載のダメージは非常に大きく,それを抑えるだけでも相当な効果がある. 兵藤:過積載を計る仕組みは整いつつある. 塚田:ETCの普及でまた計測が難しくなりつつある.ブラックリストなどもある. 瀬木:ダメージはなるべく分散させて,各道路で自分の道路の維持管理ができるといい. 井料:時間価値は在庫コストと結びつく気がするが. 兵藤:会計か何かの話で在庫の積み上げの話は聞いたことはある.あとは金利でやっている. 兵藤:電子化されたデータがある.民間で2億か3億. 羽藤:在庫と結びつけたデータはあるのか. 兵藤:知らない.学生が調べた価格.comのようなデータはある. 柳沼:過積載のチェックはされているのか. 塚田:ETCをすり抜けていく人たちのように,逮捕する根拠が必要でペナルティをしっかりさせる必要がある. 浦田:物流施設を含めた分析はないのか. 兵藤:東芝など企業の立地選択はある.ただ個々の企業によって条件は異なるので全体でのモデル化は無理. |