第22回 空間と行動のモデリング:相関の始原と展開を考える
2016年4月30日(土)1100-1500
東京大学本郷キャンパス 工学部1号館4階 セミナーA
11:00-12:00:日下部 貴彦(東京大学)
空間行動の観測自動化に向けた諸課題といくつかの実装提案
議事録
交通系ICカードの普及やETC2.0などにより,交通行動に関わるデータが膨大になりつつある.PT調査など分析者が能動的に取得するデータとは異なり,このような受動的なデータはそのままでは利用機会を喪失しかねない.そこで,まず商用車のプローブデータを使い,簡便に分析を行えるような処理方法や分析手法を検討した.また,PP調査での被験者の回答負荷を下げるべく,行動推定・質問・学習しながら観測するinteractive PPを開発しようと試みている.
12:30-13:00:近松 京介(東京大学)
Levy過程と空間相関問題
議事録
従来の目的地選択モデルでは,ゾーン間の相関の強さは意思決定地点に寄らず一定と仮定している.しかし,人間の認知を考えると,近い目的地は離散的に捉え,遠い目的地ほど集約されて(相関が強く)捉えているように思われる.そこで,NLモデルにおいて選択肢間の相関の強さを表すスケールパラメータを,意思決定地点からそのネストまでの距離によって構造化し,構造化に関わるパラメータαを推定することを試みた.推定結果より,人が空間を個別に選択肢として認知できる距離には閾値があるということがわかった.
13:00-13:30:山下 良久(社会システム)
鉄道需要予測と空間相関問題
議事録
鉄道に関する長期計画を策定する際の需要予測において,経路の相関をどう表現するかがかつての課題として挙げられていた.この問題に関して,2000年には構造化プロビットモデルによって経路の相関を表現することが可能となった.これは,誤差項を経路の長さに依存する誤差と経路に固有の誤差に分解して表したモデルであり,実際に予測制度の向上が確認された.今後は,駅内の空間改変と列車遅延・駅構内混雑の影響を評価することが求められるが,その際には乗車位置や降車位置等を含めて経路として表現することが必要となる.その場合,築地経路が膨大となってしまう.
13:30-14:15:瀬谷 創(神戸大学)
離散的空間相関の記述と交通行動分析への展開
議事録
ガソリンスタンドの空間競争と撤退行動をモデル化する際,空間競争の項をゲーム理論/社会的相互作用のフレームで考える場合と空間計量経済学のフレームで考える場合の2つのモデルを作り,それぞれを推定して考察した.その結果,両者の結果にほとんど差異が見られないことがわかった.また,場所によって地価の回帰係数が異なるという性質を扱うため,不動産市場をセグメンテーションし,場所によって回帰係数を可変とするモデルを提案した.結果として,GWRモデルに対する提案モデルの優位性を確認した.
14:15-15:00:Giancarlos Troncoso Parady(UT)
A Cross-Nested Dynamic Logit Model of Evacuation Behavior Using Conditional Choice Probabilities: A Case Study of the Great East Japan Earthquake
議事録
「避難参加および開始時刻」と「目的地選択」に着目して津波避難行動を記述することを考える.この際,意思決定プロセスの時間的な相互作用について考慮する必要があるため動学モデルを使用する.しかし,ベルマンの最適性原理は,不確定要素の多い避難行動において不適切な仮定だと考えられるため,ある行動・場所を選択した場合の次期の避難行動の効用を考えて選択を行うというフレームを仮定し,条件付確率を用いて記述した.さらに,避難行動における最終目的は避難であると仮定し,避難を選択する場合には次期の効用を考慮しないこととして計算負荷を減らし,構築したCNLモデルの推定を行った.