2013年度夏学期 都市工学演習A第三
生き延びる渋谷
課題の主旨
「いつどれほどの災害に襲われるか」という不安を、「大地震が来たらどうせ無理」といった諦めにしてごまかしていないか。渋谷のような超絶繁華街において、そのような傾向が顕著ではないだろうか。こうした状態を、渋谷のステイク・ホルダーが多様に関わるダイナミックな都市デザイン(プラン+デザイン)によって解消する。
課題の論点
1)これまで/これから→渋谷のステイク・ホルダーへの提案
この三十年でも渋谷は激変を遂げているが、現在も渋谷駅を中心に、都市再生緊急整備地域の計画が実現しつつある。目立つのはいくつかの大規模事業者による再開発事業だが、一方で、区民の参加も、まちづくり指針のような公的な文書、商店街組合らによる活性化の取り組み、マンション紛争など、様々な展開を見せている。
渋谷の過去(都市形成の経緯)と現在(進行中のまちづくりの概要)の取り組み、それによって生じている現在の状況を徹底的にリサーチしたうえで、ステイク・ホルダーの皆様に対する提案を行う。ステイク・ホルダーの方々が自分もやろうと思える提案とは何だろうか?
渋谷の物理的特性をふまえて、それを補完強化するものとして、アーバン・リング構想を前提とする。ここでアーバン・リングとは、日常的な回遊コリドーとそこに関係づけられた多様なオープンスペースがリングを構成し、それを横切る非日常的な避難パスの効用も高めるものである。アーバン・リングは、故北澤猛先生が横浜の港近傍部や東京中心部でご提案されていたものであり、放射状に形成してきた既成市街地においては、多様な空間レベルにおいて、普遍的に有効な都心部再編手法である。
渋谷駅周辺地区において、こうしたアーバン・リング構想とはどのようなものとして具現化できるだろうか?
また、大地震直後に起こる事態を想定し、それを生き延びる「事前」構想である。「事前」構想の立て方、提案の仕方とはどういうものか?
二つのスケールで提案をまとめる。
一つは、渋谷のフリンジである代々木公園、青山や代官山位までを対象にした地域全体のプラン(1:1000~2500 を想定)であり、もう一つが三次元的な空間像やそこでのアクティビティを明確に提案するランドスケープや建築を含む界隈デザイン(1:200 を想定)である。二つの班(3~4 名ずつ)を想定している。全員でアーバン・リング構想を共有して、それぞれの提案を一つの空間計画としてまとめる。
空間とは形態と機能であり、計画とはプランとデザインである。
成果物
東京大学チーム
「生きろ、大地とともに。」
渋谷内部での多様性、外部との差異性の喪失を防ぎ、都市の影、自由度を守っていくために…
渋谷が本来持つ地形に従って生まれた魅力を増進するような形で都市づくりを進めるべきである。
そのための方策として我々は、大地とともに生きるアーバンリング構想を提案する。
工学院大学チーム
「渋谷クウォーター~ディストリクトに暮らす~」
渋谷は現在、多くの人々が訪れ、様々な文化が入り乱れる超絶繁華街となっている。現在、駅前の再開発が進行していく中で、周辺の環境はどのように変わっていかなくてはならないのか。そして防災に強いまちづくりとは何か。