プレイヤー間で十分な話し合いが行われ、決められた約束は実行されるという状況を前提に考えたとき、複数の自律的なプレイヤーがそれぞれの独自性を保ちながらとるべき行動について合意し、実行されるにはすべてのプレイヤーが納得できる利得が保証されなければならない。このような利得ベクトルの実現を保証するルールを考えるのが交渉問題。
交渉問題の定式化のための基礎的要素
N={1, 2, ......., n}
交渉が不成立の場合に得られると予想される利得ベクトルをc=(c1, c2,....cn)とし、この点cについて、プレイヤー間で共通の認識があるとき、cを交渉の基準点とよぶ
共同戦略をとったときに実現すると期待される利得ベクトルの集合S={x=(x1, x2,....xn)}を協力実現可能集合または実現可能集合という。
プレイヤーの集合をN、実現可能集合S、基準点cが与えられ、各プレイヤーがその要素について共通の認識をもっているとき、この3つの要素の組 (N, S, c)をn人交渉問題という。
交渉問題(N,S,c)が与えられたとき、すべてのプレイヤーが納得するSに属するただ一つの点s=(s1,s2,....sn)が選び出されたとき、この点を交渉の妥結点という
交渉問題(N,S,c)が与えられたとき、(N,S,c)に対してただ一つの妥結点s∈Sを対応させるルールをこの交渉問題の解という。対応させるルールは関数FとしてF(N,S,c)=sとかく。
プレイヤーが交渉するに当たって考える基本的な公準を列挙する
・個人合理性
・強個人合理性
・パレート最適性/p>
・弱パレート最適性
実現可能集合が公準を満たし、基準点をcとしたとき、次の条件をみたす実現可能集合Sの部分集合Tを交渉領域という。T={x∈S : x≧c}
均等解とはすべてのプレイヤーにとって利得を均等に配分するルールである。当然、パレート最適とは限らない。
すべてのプレイヤーの利得の和を最大にする点を妥結点とするルールを功利主義的解という。
交渉領域の中え、各プレイヤーの基準点からの利得の増分の積を最大にする点を妥結点とすることがナッシュにより提案された。つまり、任意のn人交渉問題(S,c)についてナッシュ解N(S,c)は(s1-c1)×…×(sn-cn)=max (x1-c1)×…×(xn-cn)を満たすsである。
ナッシュ解は利得の測定法からの独立性の公準をみたしている。これはプレイヤーの利得をそれぞれ正一次変換しても本質的な変化がないことを意味する。
ナッシュ解が満たす公準は「個人合理性」「パレート最適性」「利得測定法からの独立性」「対称性」「無関連な代替案からの独立性」
ナッシュ解は1950年の彼の論文により、交渉の満たすべき基本的性質を公理化して、公理論的に交渉の理論を構成したもので、公理論的交渉理論の出発地点として画期的なものである。以下に利得配分の基本的条件となる公準を列挙する
ナッシュ解の基礎となっている公準のうち、無関連な代替案からの独立性の公準は早くから批判を受けてきた。そこで1970年代中旬にカライとスモロデンスキーはナッシュ解が単調性の公準を満たさないことを指摘し、新しい解を提案した。
交渉領域が拡大したとき、各プレイヤーとも利得が増加すべき。
カライ/スモロデンスキー解が満たす公準は「個人合理性」「パレート最適性」「利得測定法からの独立性」「対称性」「個人単調性」
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