論文:Zheng, Y., Zhang, L., Xie, X., Ma, W., Mining Interesting Locations and Travel Sequences from GPS Trajectories, Proceedings of the 18th international conference on World wide web, Track: User Interfaces and Mobile Web, Session: Mobile Web, 2009. ●論文内容 1.はじめに 現状ではGPSの生データを追っているだけで,それでの行動理解は難しい. この論文では,複数人のGPSログを用い,場所の関連性と個人の活動経験を考慮 した上での,上位n箇所の興味をそそる場所とmパターンのツアーパターンを探し 出す. ある個人がある場所を訪れたら,場所に個人を紐付け.さらにこのリンクを個人 のその土地での活動経験によって重みづけ. ・個人のhub score:活動経験 ・場所のauthority score:場所の魅力 2.システムの概要 <言葉の定義> GPS log:GPS測位点 GPS trajectory:連続する測位点の時間間隔がΔT以下になる集合 Stay point:滞在と判断された点の集合 Location history:滞在と移動の一連の組み合わせ →TBHG(a Tree-Based Hierarchical Graph)を用いる.密度によってクラ スター化し,同じレベルでまとめる. 羽藤:ツリーのレベルが違うということはどういう意味? →上に行くほど広範囲をまとめている(下に小さいクラスタ):多層構造 クラスタリングしてから,それらを結び付けている(矢印ベクトル). 構成 location history modeling:TBHGの構築 location interest and sequence mining:個人と場所を紐付けし,空間スケー ルに応じたhub scoreとauthority scoreを算出 recommendation(on-line):位置情報とスケールに応じて,場所やツアーを提案 3.訪問場所履歴の算出 GPSデータからGPStrajectoryを作成.さらにstay pointを作成し,リスト LocHistoryを作成.Stay pointの集合を密度によってクラスター化し,Tree Based Cluster(H)を作成.HとLocHistoryから同一階層内でのクラスター間の移 動を数えて,TBHGを構築. 4.場所の魅力度推定手法 HITS(Hypertext Induced Topic Search):authority score と評価の高いwebペー ジへのhub scoreから重要性の高いWebページを抽出するアルゴリズム. ユーザーをhub,訪問される場所をauthorityとすると,それぞれの評価値はユー ザーの行動履歴(hub score)と場所の魅力度(authority score)になる. 個人の移動履歴の豊かさは空間スケールによって変わる. →Authority scoreもHub scoreも空間スケールとして採用するクラスターの分だ け値をもつ. 羽藤:魅力度が疎の場合,上位のクラスターまで遡らなければいけないというこ と?ここでは離散的に単純に考えているが,回遊などを考えるともう少し工夫で きるのでは. 計算法 ・ユーザーと場所の関係を表した行列Mを考える.何回どの場所を訪れたかカウ ント. ・繰り返し計算 →初期値を与えて,べき乗法を用いて計算する. 標準的な訪問順序の決め方について,以下を考慮する ・それをたどったユーザーのhub scoreの合計 ・それに含まれる場所のauthority scoreの合計 ・さらにauthority scoreには利用確率によって重みづけ 浦田:訪問順序スコアはどう見る? →スコアが高いと訪問確率が高い.訪問場所を2つ同士と3つ同士で別々に計算 している.ため,3つばかりが選ばれるわけではない. 5.実証実験 評価手順 ・上位10か所の魅力的な場所,上位10個の訪問順序 ・場所はスポット(ディストリクトではない) 場所:知覚対象presentation(その地域での「代表性,包括性,物珍しさ」) 場所と訪問順序:順位Rank TBHGの利点 ・スケールを考慮でき,自由に設定できる ・土地各々に合わせた値を表現している 考察 ・代表的な場所だけではなく,珍しい地点についてもよりうまく抽出できた. ・魅力あることよりも歴史がある施設は,多くの人に利用されている. ・よく訪れる場所は魅力的な場所にならない. ・訪問順序について有益な情報を得ることができた 6.既往研究と比べた新規性 7.結論と今後の課題 魅力ある場所と,標準的な訪問順序を地区スケールに応じて探し出すことができ るため,ユーザーと場所の関係に着目して(経験値に応じて場所を重みづけ)行 動提案に役立たせることができる. 今後は,効率性も考慮した訪問順序提案への取り組み,訪問順序に基づきユーザー をグルーピング,ユーザーの訪問に関して場所をクラスタリングなどが考えられ る. ●質疑・議論 原:目的地をクラスタリングする考え方は面白い.行動モデルにおいて目的地の 選択肢をどのようにして考えるかということについて,新しいアプローチとして 考えることができると思う. 羽藤:魅力的な場所は上位10個にすれば合うから10個にしているだけかもし れない.好みの分布の仕方にはいろいろある.10個にすると,平均値的に抑え られているとも考えられるため、3個とかだとうまくいくかはわからない. 原:場所の魅力(Authority score)は我々だと違うもので考えることが多いが, ほかのひとがどれだけ訪問しているかや行動履歴の参照という指標は面白い。 羽藤:他人の行動データを模倣するマッチングにおいて、情報構造をどうするか が重要.実際の空間構造などは考察がなされていないので,空間の操作などを考 えるとdistrictやスケールなどをもっと考える必要がある.クラスタリングして はいるが,界隈性という意味ではあまり考慮されていないのではないか. 階層という概念でスポットを整理するのは面白いかもしれない.ふつうゾーニン グはアプリオリにやるが,このやり方で抽象化できればいいかもしれない. リンクを目的地として表すという話もでたが、スポットをクラスタリングすると, 街路になっていたりするのか.もしそうだとすると,面白い. 確かにこのように計算はできるが,現実には行動理論があるはず. Reccomendationや社会的なコンテキストが入るとどうなるか.ジェネラルに回遊 行動を評価しようという研究が多いが、情報提供による影響を考えるのも面白い のでは. 戸叶:データから機械的にやっている.Reccomendationとかを入れることによっ て,個人の満足度などが増加するのでは. 羽藤:カーナビとかだと少し違う? 自動車会社などの情報提供だと,目的地設定の決定をいかに簡略化できるかとい うことに尽きるが、回遊だともう少し能動的な意識が働いている. 浦田:観光みたいなのは,他人のオススメなどが影響する.単純に目的地をマッ チングするだけで記述できているのだろうか. 原:ユーザーが利用するというより,広告側に対してreccomendationを与えると いう使い方かもしれない.マーケティングでの利用価値はかなり大きいように思 う。 國分:別の論文で、歩行速度で個人の属性を推定してそれに合った情報提供を行 うというのを見たことがある.そもそもこういうやり方がいいかという話もある が. 羽藤:情報は誰から与えられたかというのは重要.そこまで考えると面白い.情 報の伝達経路によって重要度が違う. ●要約 GPS機器の普及により,大量のトラジェクトリデータが蓄積されるようになっ た.複数人の行動履歴を共有することで,魅力的な場所や効率的な行動を知るこ とができると考え,この論文では複数人のGPSログを用いて,場所の関連性と 個人の活動経験を考慮したうえで,魅力的な場所とツアーパターンを提示するシ ステムを構築している.スポットを密度によって階層的にクラスタリングする TBHG(a tree-based hierarchical graph)を用いて複数人の行動履歴をモデリン グし,場所に個人を紐付けすることにより,個人の活動経験(hub score)と場所 の魅力(authority score)を推定するHITSモデルを提案した.またそれをもとに 地区スケールに応じてツアーパターンを提示するシステムを構築し,実証実験に おいてモデルの有効性を確認した.スポットを階層的にクラスタリングする考え 方は興味深く,ゾーニングや領域性の定義に応用できる可能性があり,情報構造 の概念は都市における情報提供の在り方とその信頼性の議論に繋がった.