■論文タイトル McCall, J.J., Economics of information and job search, The Quarterly Journal of Economics, Vol.84, pp.113-126, 1970. ■はじめに この論文では,職業意欲喪失者の問題を背景として,未就労者の職業探索について 取り扱う.  職業探索は人々のスキルに対する賃金配分と,職業探索のコストによって説明さ れる.また,職業提示は定期的におこなわれ,受けるか断るかの選択をする.この ような条件下での最適な戦略は、ある一定の値以下のオファーはすべて断り,一定 の値以上の値のオファーを受けることである. ■定式化 職業探索のプロセスはN期めの提示xnを受けた時に終了し,そのリターンはf=xn-cN で表される.リターンの期待値をεとすると,xがそれより大きければ受ける,小 さければ退ける. N期目の提示を受けた時の条件付き期待値をE(N)とすると,これは未就労期間の長 さの期待値であり,オファーを受ける確率Pの逆数となる. このモデルを用いると,就業意欲喪失者と摩擦的失業者を区別することができる. ■探索コストと探索行動 未就労リターンε0の個人について,コストがc0をこえると,職業探索をしない ことが最善の策になってしまい,就業意欲喪失者となる.コストがc0を下回る場合 は職業探索を行うため,摩擦的失業者となる. ■施策 (1)職業探索コストを下げると,就業意欲喪失者の数は減る. ・εと0の関係は微妙 →調整し合っている場合と,完全にミスマッチしている場合がある ・cが下がるとεが上がるのでは?εが高くなると自分の中の基準値が高くなる? →cとεの関係が全ての個人でマッチしているとは限らない. 社会的にc0が必要ならε0 ・期待値として平均メカニズムを考えると需要と供給 ・マクロとミクロで考え方がかわる.cとεの等式で決まるが,ずれている人は就 業意欲を喪失とか,より高い職業求めてるとか,個人ごとのばらつきはある. ・均衡的なものが個人によっていろんなところで起きている.cを下げることで一 部の人が動くことになるということ. (2)未就労者に職業訓練 賃金分布大きな値をとる.Hが上昇し,就業意欲喪失者が減少 →探索コストを下げる(ex.ハローワークをいっぱい作る)方が容易だが,職業訓 練を施す法が健全な施策である. (3)最低賃金の施策 最低賃金がε0を超えるとき,最低賃金の施策がなければ受けていたはずのεmとε 0の間の提示を受けられなくなるので,未就労期間が長くなると考えられる. 最低賃金が設定されると,働き口を探している人にとっては探索期間が長くなる 可能性がある. ■φxの過大評価している場合 過大評価していると,探索期間は自分が想定しているより長くなってしまう. ■まとめ 職業提示xと探索コストcを用いて,探索行動をしない人(就業意欲喪失者)と探索行 動をする人(摩擦的失業者)の行動の区別や,職を見つけるまでの期間についての定 式化を行った. その中で,様々な施策が失業者に与える影響などの分析を行った. ■質疑 ・施策の話は一部の人たちに対してのもので,全員ではない.社会全体だとグラ フの通りcとεの値が与えられるが,一部の異なる人たちの場合は異なり,そう いう人が職業意欲をなくしたりしている. ・駐車場の問題としては考えたりできる? →探索しない人:車利用しない人 ・職業訓練でcを変えるのは,εを動かすことはできないのか? →動的にしていないから感度分析で,一部変えたらどうなる?ってやってる ・「探索コスト下げる」は駐車場ではなに? →探す能力をあげるということ.カーナビの質をあげる.カーナビ的な話はεの 話か.駐車場増やすということか. ・需要と供給をセットで考えるなら,この概念は古い.シミュレーションで解い ていくならよい.逐次的なモデルなので,戸叶さんの研究で考えられる.週報に きっと書かれるであろう. 「職業訓練」は駐車ではなに? 「遠くの駐車場にとめるの嫌だ→とめるのも悪くないよを伝える」こと.歩行者 の沿道環境をよくするとかに繋がる. ・サーチの概念 どこに出かけるかも関係している.どこで諦めるか.街歩きしているときにどこ まで奥までいって帰るか.高齢者なら制約条件があってあきらめるとか.逐次的 な打ち切り問題.もうワンブロック行くのかということ. ・古い論文だから静的だが,最近は難解な動的な問題として扱われている. ----------------------- ■全体のまとめ  この論文では,職業意欲喪失者の問題を背景として,未就労者の職業探索につい て取り扱っている.職業探索は人々のスキルに対する賃金配分と,職業探索のコス トによって説明され,また職業提示は定期的におこなわれ,受けるか断るかの選択 をする.このような条件下での最適な戦略は、ある一定の値以下のオファーはすべ て断り,一定の値以上の値のオファーを受けることである.  この戦略部分について,職業提示xと探索コストcを用いて、探索行動をしない人 (就業意欲喪失者)と探索行動をする人(摩擦的失業者)の行動の区別や,職を見つけ るまでの期間についての定式化を行っている.更に,探索コストを下げる,職業訓 練を施す,最低賃金を設けるといった各種施策を適用することによる失業者への効 果や,自分のスキルに関する意識のずれが,職業探索を長期化を招く可能性がある こと等について明らかにしている.