■発表論文 So, Sk., Daganzo, CF.: Managing evacuation routes, Transportation Research Part B, Vol. 44, pp. 514-520, 2010. ■概要 避難先に出るまでに避難路に流入してくる避難人口を定義する。流入量、交通容 量のモデルを作る。iまでの避難人口をNestとして、 0(exit)までの総避難人 口が全員避難するまでの時間を考える。 Nest iの制約条件として上側条件、下側条件を定める。上側条件は避難人口につ いて、下側条件は避難時間についての条件。 望ましい流入制御として、交通量が均等に流入してくること、それまでのNestに 対する交通量を確保して交通容量を定めることとした。 避難人口最大化かつ避難時間最小化のための戦略を考えると、リンク交通量を常 に飽和させ、避難人口を上側制約と一致させ、全Nestの避難時間を 下側制約に 一致させることが考えられる。 ■質疑 羽藤:Daganzoは交通工学の権威。 アレグザンダーとマンハイムによるボストンのアーバンデザインから始まる。 アレグザンダーはパタンランゲージを表して空間デザインの分野に分化、マンハ イムは交通工学の分野で、次にmoche、そこからMITSIMの流 れになった。 ビックディッグは、高速道路を地下化してランドスケープデザインを行うデザイ ン施策。 交通工学的には、マイクロシミュレーションを構成するBehavior modelと、車の 動きを流体力学的に考える、またはセルのフローの記述となる。Daganzoは後者 の研究をした。 数理的な都市計画とコンピューティングが発展して分化。日本では伊藤滋の数理 的都市計画、コンピューティング分野ではberkeleyが拠点と なった。 デザイン理論なんかは、MIT、ハーバードで拠点となって研究されている。 高速道路がオーバーラッピングしている。ボストンの街の分断が問題になった。 その中でフローのモデルを開発した人がDaganzo。 ネットワーク問題を考える時、この人たちは無限のパターンがあるという前提に 立っている。ネットワークや需要を考えることで、範囲の限定条件を絞 る必要 が 出てくる。これが制約条件。その中で最適化を求めると、流量を求めること ができる。配分の理論。拘束条件によってネットワークの配分が決まるのが 数 理的ア プローチの特徴。 アメリカの場合はfreewayが走っていて、容量がかなり高い。 日本の高速はもっと密度が薄い。首都高も混んでるときはランプを閉めたりして いる。研究としてはICTを使ってるのもある。 歩行者の動線をどう制御するかにも応用可能だし、スペースへの歩行者流入量を 考えるときでも使える。空間管理の仕方とか、どこがランプになってい るかを 考えるときの根拠にもなる。街路でも広場でも交差点にも使える。この論文は汎 用性が高い気がする。 ネットワークモデルに拡張したものは?Many to many? 浦田:次年度にある。ほぼmany to many。many to oneもある。 羽藤:需要予測のモデルからはどのように言えるか?動学の概念はないが。 柳沼:制御した分だけ流すっていうこと。ドライバーの概念はない。 羽藤:ドライバーの心理による制御がどうあるかっていうと。。。 浦田:社会的相互作用というか、どれくらい避難勧告に従うかの話。 羽藤:伊藤君のネットワークモデルは瀬戸内海側だけだっけ。 伊藤:このモデルは、入れ籠むイメージで解いているイメージ。配分の考えに近 い印象。漸化式的な解き方は参考になると思った。 羽藤:意思決定基準ではそういう風にやるのがオーソドックスか。 柳沼:逐次的な混雑状況を見るという話になるか。 羽藤:経路選択は平時の話は多いが、避難時はチェーンの選択になる。あの人を 助けたいという欲を断ち切って避難するというチョイスをどう考えるか という こ とでは、津波が来る時間と、ボトルネック容量とを考えることになる。山側 の人が先に避難した方が海側の人の容量を確保できて、避難できるというこ と も考え られる。市街地の張り付き方、街路の容量を考えることもできる。 ってか、カタリーナについてか、これ。2006年の。 伊藤:ハイウェイレベルで捉えている。 羽藤:アメリカはランプが多い。頻繁にある。 浦田:ハリケーンから遠い人も早く避難した方がいいよ、っていうのはある。 羽藤:全体最適を考えると、みんな早く逃げた方がいい。下流のことを考える と、余裕がある街路をもっと使った方がいいということか。避難した後で 経済 的損失がある場合もあるが、その場合は避難先のことを考えろということか。 山崎:陸高で考えると、下で絞っておくと坂で渋滞しないということがあるが、 そういうのをしてもいいのか。あえてボトルネックにしているというこ とにな るが、そんな道路設計をしてもいいということか。 羽藤:陸高だと坂でスピードも容量もあがらないので、下に従って縦の容量をそ ろえるべき、ということか。どうでしょう。そんな気もする。 浦田:ネットワークを分散させ、回り込ませるということか。 羽藤:ネットワーク的に解くことが必要ということ。配分したらそういう結果で るのかも。一番ピュアなのは道路の幾何構造で考えること。動的な話な ら信号 とかでできるかもしれないが。アメリカとは違って陸高ではどうか、というのは ある。ネットワークだから、確信が持てない。 柳沼:細くなる手前を細くしとくべきという話は日本でもあるのかな。聞いたこ とはあるが。ネットワークではどうあるべきか。Daganzoはこの 論文を出す前に グリッドロックの話もしていて、そこらへんの関連性で見るといいかもしれない。 羽藤:被災地ではグリッドロックが起こった。平時と非常時でネットワークの評 価は全然違うから、そこをどう評価するかは重要。事前復興を含めてい い議論 ができそう。良いテーマだと思う。 柳沼:確率的変動みたいな話も入れるといいかも。 浦田:容量時間変化は少しだけだが書いてあった。 羽藤:容量が時間変化するとなにがおもしろい? 柳沼:気象条件によって変化する話はよくある。平時と非常時で容量が変化する とネットワークのパターンも変わってくるという話はおもしろいかもし れない。 藤垣:復興時の帰宅困難者の問題とも絡められる。地下鉄の容量の問題で、渋谷 がボトルネックになる問題とか。 羽藤:たしかに、鉄道のネットワーク評価にすごく良いと思う。鉄道会社は駅に よって容量決まっているから、接続のさせ方にルールが作れる。公的資 金の投 入で改善するとか、これできれいにやれそう。 柳沼:頻度を間引いて運転、という時に、今は何も考えていないでやっている が、キャパシティを考えて間引いた方がいいと議論できる。 羽藤:論文は単純に書くと良い。空間デザインでもそう。ツボはどこかを決める 研究。空間デザインのここがつぼ、っていうところが示せるいい。