東京大学 羽藤研究グループ > 講座 > 2015 > 行動モデル夏の学校2015 > 当日のまとめ
第14回行動モデル夏の学校2015は,東京都・文京区の東京大学本郷キャンパスにて,2015年9月25日から27日にかけての3日間,講師14名,参加者102名(うち若手研究者セッション講演者3名・TA4名)によって行われました. 基調講演 Keynote lecture / 講義 Lectures / |
基調講演 Keynote Speech
Masahisa Fujita ( Konan University / Kyoto University / RIETI )
Diversity and Cultured in Knowledge Creation -The Story of the Tower of Babel Revisited-
ICT(Internet&Communication Technology)や交通サービスの発展に伴い,コミュニケーションのあり方が大きく変わろうとしている.そうした知 識創造社会への変化を背景として,知識の多様性・文化と知的生産力の関係を,「バベルの塔」の物語を引き合いに出しながら講演をされた.バベルの塔では知識を共有する人々が協力し,神に挑んだ結果怒りを買い,コミュニケーションが初期化されて多言語・多地域の社会が生まれたとされる.藤田先生はこれを天罰に見せかけた天恵だと考える.実際,東京に人口が集中しすぎた日本の知的生産力は低下し始め,研究機関でも外国人研究者の割合や外部協力がアウトプットにつながっているなど,知識の多様性の重要度が伺える. |
講義 Lectures
Arnab Jana(IIT Mumbai) The contents of this presentation is 1.Four-step modeling, 2.Choice Models, and 3.activity based modeling approach. Four-step modeling is by each model (gravity model in distribution step, etc.). To improve the travel demand estimation, choice model based on the random utility theory is used. Activity based modeling is focusing on the sequence of behavior in time-space matrix, and the better understanding and prediction of travel behavior. (PDF Document) |
Giancarlos Troncoso Parady(Univ. Tokyo) 離散選択モデルでは意思決定主体,選択肢,説明変数,意思決定ルールを定 義しなくてはならない.基本的にはルールとしてランダム効用最大化理論が用いられ,誤差項の分布を仮定することで選択確率が算出できる.パラメータの推定手法としては最尤推定法が最も一般的である.また,離散選択モデルは個人の交通行動を予測する一方で,政策分析では集計的な行動の評価が必要となる.需要変化の評価としては弾性値(elasticity)が代表的に用いられる.また,予測のための集計化としては代表個人法などの手法が存在する. (PDF Document) |
Makoto Chikaraishi(HiroshimaUniv.) クローズドフォームな離散選択モデルはMcFadden(1978)によるG関数から導出できるという特徴を持つ.誤差分布を特定せずに選択肢間の相関構造を記述できる一方で,加算型の効用関数で多変量極値分布(MEV)のモデルにしか適用できないという限界がある.Li(2011)は分散安定化の手法を用いることで,MEVに限らないさまざまな分布へと一般化した.また,Mattson et al.(2014)はMEVからGEV(一般化極値分布)へと拡張した一般化G関数を提案し,選択肢間の統計的な依存関係を扱えるようにした. (PDF Document) |
Hideki Yaginuma(Univ. Tokyo) open-formのモデルは推定に膨大な計算量が必要になるが,closed-formのように IIA特性を持っていない点で優れる.東京 の鉄道ネットワークは経路重複が大き な課題であり,この相関をどう表現するかが重要である.そこで,ODペアごとの 共分散行列の各値は経路重 複割合で与える構造化プロビットモデルを用い,結 果を改善し18号答申の需要予測に用い,精度の改善を行った.また,Mixed logit modelは誤差項に2つの分布を仮定するモデルで,そのパラメータの設定次 第で他のGEVモデルを表現できるという特性を持つ. (PDF Document) |
倉内慎也(愛媛大学) 行動モデルの基礎と推定 前半:行動モデルの基礎 |
山本俊行(名古屋大学) 行動モデルの応用 選択肢集合が充たすべき条件は,1)相互排他的,2)網羅的,3)有限個で あること.多数の選択肢を似通った特徴を持つグループにまとめることもあり,その場合は効用関数の定義が難しいためネステッドロジットモデルを適用することが多い.モデルによっては「行動をしない」という選択肢が必要となる場合があるが,選択タイミングの設定に注意が必要である.また,国 ごと調査ごとにトリップの目的分類が異なるなど,分析者が評価したいことと選択肢集合の設定は密接に結びついている.(PDF Document) |
井料隆雅(神戸大学) 行動モデルと均衡 day-to-day dynamicsを考慮したモデルは,連続時間か,離散時間か.意思決定 プロセスをどう仮定するかで分類される.離散時間モデルのexponential smoothingで連続時間モデルが作成できるが,関数fの設定が重要である.特に, 時点tで選択aからbへ変更する比率ρabの設定方法 についてImitative Dynamics, Excess Payoff Dynamicsなど,種々検討されてきた. (PDF Document) |
円山琢也(熊本大学) 行動観測と分析 交通調査と郵送による予備交通調査について.PT調査の回収率は70-80%から最近 は25%に落ち込んでいる.これに対しスマート国勢調査 はインターネット上で回 答でき,回答のなかった世帯に対し調査票を配布することで回収率の改善を試み ている.また,熊本での2012PT調査 では一部モニターにスマホPP調査を実施 し,参加者の傾向分析から調査参加選択モデルの構築を行った.居住地別のPT参 加率や用途地域別参加 率もモデルに組み込み,高齢者や低層住居地域の居住者 が参加しやすいという結果を得た. (PDF Document) |
若手研究者セッション Early Bird Session ...Detail reports in English here
Ryo Fukuda (Univ. Tokyo) / Firms’ location choice based on trading and financing relationship 都市の発展過程において限られた大都市への人口集中が続いてきた一方で, 近年の企業の立地行動としては中小企業の,地域内での移転が目立ってい る.そこで,帝国データバンクの企業情報を用いて,取引ネットワークに着目した企業の立地選択行動モデルの構築を試みた.選択の単位は地方自治体 とし,地域を大分類とするネステッドロジットモデルを形成し,パラメータ 推定を行なった.結果として,中小企業の地方都市への立地行動について高 い的中率を得た.企業間の時系列的・継続的な関係性に 着目することで,よりよいモデルの構築が可能だと考えられる.
(PDF Document ) |
Varun Varghese (IIT Mumbai) / Activity Opportunities and Changing Travel Paterns: A case of Developing Nations 発展途上国における公共交通ネットワークの整備やICT(Internet& Communication Technology)の進展を背景に,活動参加機会と交通行動の変 化を対象として研究を行なった.特にICTの普及は情報獲得を通じて個人の 交通行動に大きな変化を与えることが予想されるため,社会経済属性と同様 にICTの使用を考慮したモデルのフレームワークを提示した.さらに地域間 差異を考慮した目的地選択モデルの構想を示した.
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Yuki Oyama (Univ. Tokyo) / A context-dependent scheduling model considering measurement errors in pedestrian network 歩行者の活動は空間特性や活動履歴といった文脈に依存して移動の中で発生 し,スケジューリングが動的に決定される.そこで滞在のみならず歩行も 「活動」=「特定空間への時間配分行動」として扱うことで,連続的な移動− 滞在の系をモデル化した.さらに,プローブパーソンデータのもつGPS観測 誤差を考慮し,位置座標の羅列データから確率的に活動列を生成しデータ・ セットとして用いた.推定結果として歩行や時間消費によるエネルギーの減 少のみならず,活動同士の相互作用や空間の影響を把握した.
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演習 Group work
課題:プローブパーソンデータを用いた行動モデル推定
プローブパーソンデータ(ロケーションデータ,ウェブダイアリー)・土地利用データ・交通ネットワークデータを用いて,離散選択モデルをはじめとした行動モデルの構築と推定を,4~7人での班ごとに行い,成果を発表しました.
English program
Aチーム(東京工業大学チームA) Returning home or Recreation? pdf / code Abstract: In those days, early morning activity and after work activity is catching eye, thus we analyzed effect of before and after work activity to the worker’s wellness and economics and estimate binary choice model : going back to home straight and after work activity. In addition , they indicated that the information about the location of the home, workplace and each activities would improve the accuracy of the model. In those days, early morning activity and after work activity have an cathcing eye, thus we analyzed
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Bチーム(東京工業大学チームB) Difference of Leisure behavior between sunny day and rainy day pdf / code Abstract:Focusing on the behavior difference between rainy days and sunny days, they estimated the number oh trip chain model(choice alternative : 1trip, 2trip, and more than 3) with rainy dummy. As a result, it was shown that weather dummy is significant when one trip. moreover, policy simulation that the fare discount in the case of the probability of precipitation is 20% or more.
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Cチーム(インド工科大学(IIT)チーム) Study of Clustering Modes based on Choice of Transport across Space :a case study of Tokyo Metropolitan Area pdf / code Abstract:Their contribution was detailed analysis in relation to the spatial distribution in transportation choice between different attributes and estimated transportation selection model . They mapped the choice probability of each transportation mode and showed the difference of distribution of selection probabilities .
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Dチーム(東京大学都市工学科チーム) Transportation model of Trip Characteristic on Companionship pdf / code Abstract:they estimated NL model with assumption that there might be behavioral difference weather going alone or accompanied: first level is going alone or with someone, second level is transportation mode choice.Their model was reviewed as for either with multiple people or individual is under different circumstances , there is a need to rethink the structure of the model..
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Eチーム(東京大学生活研チーム) Dynamic route choice behavior pdf / code Abstruct: Focusing on walking trip around Kannai Station , we estimate the dynamic sequential path selection model after creating a network data . Nevertheless introducing the store number and street trees that are likely effectiveness in behavior as an explanatory variable , we used for the estimation was a link transition data all within the target area ( without limitation by trip purpose and actual OD), significance was not strong .
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Fチーム(英語合同チーム) Variable Time and Cost Estimators based on Distance Segmentation pdf / code
発表概要: In this year’s summer school of behavior modeling, the foreign students’ group focused their
study on the application of various logit models based on distance segmentation, featuring the
dataset in Yokohama city. Within several travel distance range, it was found that certain trip
mode dominates people’s choice decision with significantly high alternative specific constants,
while the value (parameter) of time and cost fluctuate within different distance groups. It is also
suggested that the lack of notice of real out of pocket cost of several travel modes, namely
private cars, and cycling, in fact disturbs the use of behavior model and would even lead to
some confusing results.
感想: The outcomes of this study were not inspiring enough, but it do provide some critical thinking
towards the use and structure of PP data, as well as the behavior models. |
Japanese program
Gチーム(芝浦工業大学Aチーム) アクセス・イグレスにに着目した交通手段選択 pdf / code 発表概要: アクセス・イグレスに着目した交通手段選択モデルを構築しています.元データのクリーニングから始めてアクセス・イグレス距離を説明変数に加えたMNLモデルの推定を行い,どちらも負に効いていることがわかりました.
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Hチーム(芝浦工業大学Bチーム) 通勤・移動時間短縮に伴う自由時間の増加を考慮した余暇行動有無モデルの構築 pdf / code 発表概要: 帰宅時間の曜日別のバラツキを考慮して水曜日ダミーを組み込み,帰宅時の寄り道をする/しないの二項選択モデルを推定しました.残り可能滞在時間が有意に効き,鉄道所要時間の半減を行うことで寄り道を行うサンプルが3%増加することがわかりました.
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Iチーム(愛媛大学チーム) 環境の変化による交通手段選択モデル pdf / code 発表概要: 雨量に伴い移動の危険度が増すことに着目し,前日の降水確率を説明変数に加えた交通手段選択モデルを推定しました.前日の降水確率と当日の天気を組み合わせてダミー変数を組み込むと,当日急に雨になったときに公共交通を選択しづらくなる,予想と真逆の結果になってしまいました.
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Jチーム(名古屋大学チーム) 非仕事系トリップにおける交通手段選択に影響を及ぼす要因の分析 pdf / code 発表概要: 名古屋大チーム.出勤・業務以外の非仕事系トリップに着目しました.トリップチェーンの中で,直前トリップの交通手段の与える影響が大きいことに気づき交通手段選択モデルを推定しました.前と同じ交通手段のダミー変数が有意に効いていることがわかりました.
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Kチーム(山梨大学チーム) 自転車に着目した交通手段選択モデル pdf / code 発表概要: 雨天時の交通手段の変更を同一個人で分析し,公共交通機関への転換があることを発見しました.晴れ/雨ダミーを組み込んだ男女別交通手段選択モデルを推定し,料金が効いていることに着目し電車料金の割引により電車利用が促せることを確認しました.
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Lチーム(熊本大学チーム) ジニ係数を用いた交通行動特性の把握 pdf / code 発表概要: day-to-dayの移動圏域の変動に着目し,ジニ係数を用いた指標化を行いました.回帰分析で居住地の利便性,交通手段の影響がジニ係数に与える影響を分析し,利便性の高い中心部でジニ係数が高くなり,移動圏域がばらついていることを確認しました
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Mチーム(広島大学Aチーム) 内生性を考慮した目的地選択モデル pdf / code 発表概要: 中心市街地のにぎわいを内生変数としてモデルに導入して,中心市街地と郊外の目的地選択モデルを構築し,他者の行動に影響される相互作用の推定に取り組みました.推定結果は算出できなかったものの,モデルの着眼点に関しては好評でした.
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Nチーム(広島大学Bチーム) 自転車交通に関する分析 pdf / code 発表概要: 広島大学Bチーム.標高差が大きくなるほど自転車の利用率が減少するという分析結果から,坂ダミーを説明変数として導入して交通手段選択モデルを構築しました.自転車から電動アシスト自転車に転換するシミュレーションを行ましたが,電動アシスト自転車の導入効果は大きくないという結果でした.
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Oチーム(東京理科大学チーム) 定期券が私事目的の交通手段選択に与える影響 pdf / code 発表概要: 定期ダミーの有無を考慮して交通手段選択モデルを推定し,定期を持っている人は鉄道を利用しやすいということ,また鉄道運賃の説明変数を,定期を反映した料金設定に変更することで,より有意なモデルを構築することができました.
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Pチーム(株式会社道路計画チーム) 個々の移動データから行動モデルの構築 pdf / code 発表概要: 道路計画チーム.自動車トリップに着目し,サンプル毎のベースルートを設定し,経路変更の二項選択モデルを推定しました.所用時間や天気が有意という結果で,変更可能性が高くなるということが明らかになりました.代替経路や経路重複,出発時間の影響に関して講師陣から講評がありました.
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Qチーム(神戸大学・金沢大学・東京海洋大学合同チーム) 降雨と平日・休日に着目した交通手段選択モデルのの推定 pdf / code 発表概要: 降雨と平日休日に着目し,説明変数として,天気ダミー,曜日ダミーを組み込んだ交通手段選択モデルの推定を行いました.基礎分析の結果でバスの利用者が極端に少ないことから,バスの所用時間を減少させた場合,料金を割引した場合に関してシミュレーションを行いました.
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Rチーム(個人参加者合同チーム) コンパクトシティの交通への影響分析 pdf / code 発表概要: コンパクトシティ政策が交通に与える影響を分析するために,通勤トリップに着目して分析を行いました.着眼点は良かったが,PPのままで政策シミュレーションが可能だったのでは,という講評をいただきました.
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表彰 Award
行動モデル夏の学校には例年,数理的にモデリングをつめられていたグループには,故・上田孝行先生にちなんだ香住賞が,行動分析によって興味深いfact findingを実現したグループには,故・北村隆一先生にちなんだDavis賞が送られます.今年度の受賞チームは以下の通りです.
香住賞 :該当なし
Davis賞:Cチーム インド工科大学チーム (Team IIT)